茶托は湯呑みにとって座蒲団のようなもの。使用すると正式感が増します。湯呑みは陶磁器なので、相性としては、木漆が最もふさわしい。
珈琲や紅茶の受け皿は磁器を用いますが、これは西洋の習慣として熱い飲み物を冷ますために一旦受け皿に注いでから飲んだ名残だそうです。
但し昔はもっと深い皿だったようですが。
ですから当初から日本の茶托とは使用目的が異なっています。
この湯呑みならばこの茶托、というケースもあれば、この茶托にはこの湯呑みという選択するたのしさもあります。
田中敏雄さんの茶托は渋い。一見気がつきにくいかも知れませんが、ざんぐりしながらも緻密な彫りと塗りに87年の歳月がなせる技と美意識が見てとれます。それこそが田中氏の真骨頂。
日常使いこそ身近には気に入ったものを置きたいものです。(一)